生き物に血圧があると分かったのは18世紀のこと。そして今のように人の血圧を血圧計を用いて測るようになったのは、いまから100年前のこと。血圧と死亡率のあいだの関連が明らかになってきたのは、ここ数十年のことです。そのあいだに残念ながら高い血圧で生命をなくしたかたもたくさんおられたはず。
貴重な犠牲の上で、血圧を良好に保つことの重要性が分かってきたのです。それを知らないでおく手はありません。
血圧の説明の際よく、井戸の手押し式ポンプとその先につながるホースを例にあげることがあります。ホースが詰まっていたり、細くなっていたりしたのでは、水はスムーズに流れませんし、その分、ポンプも強い力で送り出さなければなりません。またポンプ自体が壊れて押し出す力や汲み上げる力が弱かったりすれば、水をしっかりと出すことはできません。
もうお分かりのように、ポンプが心臓でホースが血管です。この2つのどちらにも異常がなければ、血液はある圧をもってスムーズに体内を循環するわけですが、このときの血圧を正常血圧というわけです。
逆に血圧が高いということは、心臓や血管になんらかの障害が起こっていることを意味しています。
血圧が高くなる原因についてはほとんどわかってないのが実状です。まれに、腎臓の病気や甲状腺機能異常などの病気によっておこる高血圧もあり、二次性高血圧といいますが、これは原因となる病気を治療すれば、ほとんどは血圧も正常に戻ります。
正常な血圧でもさまざまな要因で変化します。たとえば、運動、食事(含むコ−ヒーやお茶など)、興奮・緊張、喫煙、アルコール摂取、寒冷などでは血圧が高くなります。逆に、温暖、安静、リラックスなどは血圧を低下させます。
この調整に関わっているいくつかのメカニズムがうまくいっていない状態ということもできます。したがて治療はそれぞれの調整をコントロールするようなことになります。
血圧の種類
収縮期血圧:心臓が収縮して、最も勢いよく血液が流れ、血管内部の圧力が高いときの血圧です。「最大血圧」、「最高血圧」、「上の血圧」などとも呼ばれます。ぐっと最初にホースを押し出す圧です。
拡張期血圧:心臓の収縮が終わったときの最も低い血圧です。『最低血圧』、『最小血圧』、『下の血圧』などとも呼ばれます。ホースを押し出したあとに、ホース自体の持つ弾性などで加えられる圧です。
脈圧:収縮期血圧と拡張期血圧の差をいいます。
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高血圧になっていても自覚症状が現れないことが多いのですが、身体のなかではゆっくりと病気が進んでいます。それは動脈硬化といわれる病気で、動脈硬化は高血圧を一層悪くし、悪くなると動脈硬化がより進むという悪循環ができ上がります。
そして、こういった状況が長く続くと、心臓では虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)、心臓の肥大などが起こります。また、腎臓機能の低下や脳卒中(脳梗塞や脳出血など)、の原因になります。
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